島之内つうしん ≫ 読了

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石丸元章「平壌ハイ」(文春文庫)

石丸元章「平壌ハイ」(文春文庫)


前代未聞の超不真面目な北朝鮮旅行記。

この本一冊あれば、北朝鮮のことはまる分かり!
なんてことはまったくなく、一般的な北朝鮮に関する情報はほぼ皆無。
著者の完全主観によってチョイスされた事柄が、著者の完全主観によって表現されている。
逆に一般の北朝鮮関連の本にはない事柄が発見できるのでは(たぶん)。

破天荒なのは、毒っ気のある文章に定評があり、ドラッグ本で名を馳せた人なので「そうでなくっちゃ」というところ。
だが、のっけから飛行機中でドラッグをキメキメ平壌入り。滞在先でのホテルでもドラッグパーティー、ホテルで盗聴器探したり、金日成の生まれた場所(北朝鮮の聖地)でポイ捨て、北朝鮮唯一のボウリング場でスコア179。などムチャクチャぶり。たぶんある程度創作は入っているとは思うが(そんな都合のいいことあるわけないやんって部分があるが、おもしろいから許せる)、一応ノンフィクション。

金正日体制を支持している人にはありがた~い場所や施設で、言いたいことを言いまくるのが痛快。作中では「社会派ギャグ」といっている。

毒をもって毒を制す。
非常識な国は常識で論じたところで意味がない。
クレイジーな国にクレイジーに挑み、この国が抱えるあらゆる不幸(貧困、飢餓、武力政治、言論弾圧、身分差別などなど)を笑い飛ばそうという意欲作なのではないだろうか。そういった意味では真面目な本である。

それから朝鮮半島名物の犬料理。
犬は食べたいとは思っていなかったが、この本を読むとちょっと食べて見たいと思ってしまった。
島之内にも食べられるところありそう・・・。
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大鐘稔彦「両刃のメス ある外科医のカルテ」(朝日文庫)

最近堤真一主演で映画化された「孤高のメス」の作者大鐘稔彦のエッセイ。
大鐘氏本人が現役の医師。「孤高のメス」では、豊富な医学情報をもとに等身大の人間味ある主人公がリアリティたっぷりに描かれていた。文庫本で6巻もあるが、物語にぐいぐいと引き込まれて、あっと言う間に読んでしまった覚えがある。

小説同様に大鐘氏の医療に対する思いが伝わってくるが、その思いの原点は若手時代のかなり過酷で苦い経験であることが分かる。

「エホバの証人」に対する無輸血手術などでもその腕の確かさが知られる同氏。そこに至るまでの道のりは決して平たんではなかった。若気の至りで術死させてしまった患者の話が赤裸々に語られる。「こんな事を書いて大丈夫なのか?」と思えるほど、ショッキングな内容である。

「医者は生涯に人を10人殺す」とは、よく医療ドラマや小説で聞くセリフだ。私は医者でもなんでもないが、多くの死に対面し、それを乗り越えなければ、1人前の医者になるためにはなれないという意味だと思う。死者の上に成り立つ「医学」というものの性。何の仕事であっても修羅場を潜り抜けなければ、一人前にはなれない。だが、医師にとって修羅場での失敗は、患者の死につながる。そんな過酷な外科医の現実。幾多の生死を乗り越えてきたから書ける内容でもある。

「孤高のメス」の土台となったと思われるエピソードも数々あり、小説のファンとしても興味深い。

タイトルには「メスは使い手によって”名刀”にもなれば、”凶器”にもなりなかねない」という作者の現役外科医時代の自戒が込められている。

吉村昭「史実を歩く」(文春文庫)

吉村昭「史実を歩く」(文春文庫)


「戦艦武蔵」「深海の死者」などの戦史小説、「長英逃亡」「生麦事件」などの歴史小説で知られる吉村昭(2006年没)の小説取材の裏話。

膨大な資料に目を通し、実際の現場に脚を運び、関係者にも取材し、歴史の真実に肉薄。
歴史学者以上の精力的な活動により、あらたな史実が浮かび上がる。
「高野長英の逃亡ルート」「井伊大老を暗殺した水戸脱藩士関鉄之助の逃走ルート」「皇太子ニコライの長崎での遊行」などなど。

また創作における失敗談や取材対象者との胸を打つようなエピソードも。
著者の並々ならぬ創作に対する情熱が伝わってくる。

下手な歴史小説を読むよりおもしろい。

猪瀬直樹「こころの王国 菊池寛と文藝春秋の誕生」(文春文庫)

猪瀬直樹「こころの王国 菊池寛と文藝春秋の誕生」(文春文庫)


ノンフィクション作家猪瀬直樹初の小説。
小説家として「父帰る」「真珠夫人」などの作品で知られ、劇作家、ジャーナリストであり、出版社「文藝春秋社」を創設した実業家でもあった菊池寛。その秘書である「私」が、菊池寛と、後に『モダン日本』の社長になる馬海松との3角関係を通して、菊池寛の心に迫っていくフィクション。

20歳の女性である「私」の1人称で物語は進む。女性を語った文体が見事で、太宰治の小説を読んでいるよう。昭和初期の雰囲気が伝ってくるだけでなく、1人の魅力的な女性の存在感がある。
「なぜ菊池寛は夏目漱石が好きではないのか」「『こころの王国』とは何か?」など、人間菊池寛の人生がミステリーのように解き明かされていくのがおもしろい。

同時代、文豪と称される夏目漱石や芥川龍之介。それに対して通俗作家と売れっ子であったのに一段低く見られていた菊池寛。しかし、菊池の作品に通じるある哲学が明らかにされ、読む者の胸を打つ。

ノンフィクションで培われた猪瀬の手腕がここでも発揮され、菊池に関するエピソードは膨大な資料・取材に則しているためノンフィクションとしても興味深い内容。また、小説としてはちょっと切ないラブストーリーとしても読める。

読後、人間味溢れる菊池寛の小説が読みたくなった。

猪瀬直樹「唱歌誕生 ふるさとを創った男」(文春文庫)

猪瀬直樹「唱歌誕生 ふるさとを創った男」(文春文庫)


誰でも小学校で歌ったことがある「故郷」「春が来た」「紅葉」「春の小川」。明治42年~大正3年に作成された文部省唱歌だ。これらを作詞した高野辰之・岡村貞一を中心に、唱歌が生まれていく過程を時代背景、関係者を通じて描くノンフィクション。スタートは島崎藤村「破戒」のモデルとなった信州の蓮華寺から。挫折と成功。島崎藤村、大谷光瑞、田山花袋、高野辰之の姪原田武子など、有名無名の人生が交錯する。

「ふるさと」をキーワードに人々のアックボーンを再構成することによって文部省唱歌のバックグラウンドを描きだしている。猪瀬直樹の精緻を極めたフィールドワークと膨大な資料分析によって、意外な人間の結びつきが読み解かれていくのが醍醐味。

「『故郷』のメロディーには賛美歌の音階がしのびこんでいるのではないか」。
作中で明らかにされる明治維新による欧米文化の流入を経て起こった日本の伝統的な五音音階と西洋の七音階の融合。それの結果の1つが文部省唱歌だった。音楽だけでなく和と洋の融合はいたるところで起こった。欧米流の近代国家の誕生により、故郷(くに)は国という抽象的な観念になり、「すべての日本人は、この時点で故郷を喪失したのかもしれない」と猪瀬は言う。本当の意味での故郷を失った日本人は、変わりの故郷を見つけた。それが唱歌の中にある故郷であり、100年以上歌われ続ける理由なのではないかと思った。

音楽以外にも近代の宗教、歴史、文学、思想など様々な角度から検証。知的な興奮を与えてくれる1冊。
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凪井のん

Author:凪井のん
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島之内で仕事をしています。
雑然とした雰囲気で、妙な懐かしさのあるこの場所に愛着があります。

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